2023-01-01から1年間の記事一覧

激情

左手の薬指に光る銀色を見て、針を刺されたような、胸がキュッと締まる感覚になった。 あと何回こんな思いをしたらいい。そういう季節を繰り返して、私たちはいつか棺に入っていく。自分と人の違いで喜んだし、自分と人の違いでいつも苦しんでいる。周りの人…

あみもの

誰のものにもなりたくない。毛布にワンプッシュしたアクオリナのピンクシュガーがちょっと強めに香った。笑えるくらいに、何も要らない気がしてきた。夜が深くならないと眠れない。退屈な日、生姜の入った紅茶をじぶんで淹れて、なんとなく本を読んだりした…

ともだち

風邪になると、いつも母の手を思い出す。ヴィックスヴェポラップのツンとした匂い。母の手が私の頬に置かれた。冷たくて、気持ちよかった。大人になっても、あのときの母みたいに優しくしてくれる人がいた。わたしが熱くてバテてた時、タオルハンカチを水道…

雨が降らない日

「遅れてごめんね」と言うと、目の前の彼はコーヒーを一口飲んで、微笑んだ。笑った時に目尻にできた小さなシワが好きだった。 別れ話をしに来たのに、思ったより今日のAくんがかっこよくて、少し勿体なくなった。あっちはまだ振られるってわかってないから、…

くらし

雨なのに傘をささないで歩く新宿。歩けば歩くほど小雨になって、最後には降らなくなった。家に帰って手を洗うと、イソップで買ったハンドソープの香りがフワッと鼻に入る。私が手を洗ったら、つぎはきょうたくんの番。手を拭く前に、少し伸びた髪を鬱陶しそ…

官能的感覚

私の人生がシルバーだったから、貴方の真っ黒い人生の差し色になれた。関係を急ぎすぎるとき、その恋はもうすぐ終わりってこと。「ほんもの」はいつだってゆっくり。焦れったくなって待てなくて、いつもお利口さんの私のもの。最後まで私が待てなかったこと…

鮫の島

暑い夏の夜、橋の上で貰ったくちづけ。暑くて寒いような難しさ、私は明日どんな服を着てこの街を歩いたらいい。一緒に行きたかった川は、干からびて昨日無くなったらしい。あの時行っとけば良かったね、なんて意地悪を、私は平気で日記に書いてみせた。誰か…

プレゼントに、草臥れたお花

貰ったものを捨てる時ってどんな気持ちだろう、と思いながら、お花も、アクセサリーも、服も、香水も、手紙も、気持ちも、ゴミの日に出しちゃった。そんな夢を見た。 誰とでも話が合うわけじゃないし、好きな話をした時に、うんうんと自然に笑ってくれる人が…

はつこい

要るものと要らないものを分ける暮らし。一緒に売られてきたはずなのに、ペットボトルの本体と蓋を別にして捨てないといけないのは何故。教えてくれたのは、もう戻ってこない人。 わたしの言う美しさとは、朝の光だった。 誰かの家で気怠く浴びた朝陽も、公…

赤子を抱きしめる

水分が多い生活。1日に3回自販機の水を買う。涎が多いから虫歯になりにくい。そして、すぐに泣いてしまう。そんな暮らしで大丈夫です。わたしが守りたいと思ったものが、別にわたしが守らなくて良かったものだったとき。ただ見てあげてたら良かったんだね。…

私の星

自分が普通の女の子だな、と世界を諦めたのはおそらく小学校低学年くらいだったと思う。周りの子がキラキラして見えたから。さえちゃんは色が白くて顔が可愛かった。ゆなちゃんもおっとりしていて髪がつやつやで、なんでも知っていて好きだった。私は抜けて…

注射の時に歌う歌

地元の歯医者の歯科助手の腕にたくさんの線を見つけてしまったとき。高校3年生の私は、もう1個1個のなにかしらに動じないような頭になっていたように思う。線があるな、と思って終わった。それは、少なくともネガティブな意味を持つものに違いないのだけど、…

鈍く光る

幸せはきっと手元にあるときにその存在や輪郭を正確になぞることが出来ない。みさきくんにもう二度と会えないかもな、とぼんやり考えながらあの苦痛だった高校時代に思いを馳せた。プールの授業、水面がキラキラ光って私を驚かしてみせた。プールサイドが照…

しらべ

早朝の公園って私にとって切なさの象徴だ。あるときは、父親とのお別れの日だった。家の近くの公園に父が来ていて、母が私と妹を外に連れ出した。朝は、5時とか6時くらいだった。肌寒かったけど、長袖ではなかったと思う。私が5歳の頃から香港で単身赴任をし…

夜景を見て泣いた

1人で都庁の展望室に来た。金曜の夜だから、人がすごく多い。おそらく観光なのだろうなという集団とも、仕事が終わって1人で来たであろうサラリーマンとも、誰とも目が合わない夜。 上から東京の夜景を見下ろした。いつも通る交差点がすごく小さく見えた。誰…

花束が欲しい

天気が明日だけ悪いみたいだった。頭が痛くて、お腹も痛い。もし今死ぬなら、綺麗にお化粧をして、お気に入りの服を着て死にたいよ。自分の体の中で何が起こってるのかわからない。発熱。今まさに、わたしは悪い蛹。中が熔けて、新しい細胞が生命をかき消し…

宇宙すぎる、最近

小さい頃から星を観察するのが好きだった。田舎の川沿いの道で、寒い季節の学校帰りによく寝転んで星を見た。1時間くらい見ると満足してしまって、家に帰った。私は、星を見ている時、自分の生まれ育った「星」と対話していた。どこか懐かしい気持ち、地平線が…

小川

帰路、BGMは無かった。半年以上前のことなのにまだ夢に出て魘されるのか。人や物に執着しない。手放すことの楽しさを覚えたのが20代の頭というのは、なかなかに贅沢な子。整理整頓。必要最低限とは言うけれど、持ちたければもう少し持ってもいいよ。部屋が散…

魚の目

全部が壊れそうな毎日。みんなが少しずつ無理をして何とかなっている部活動。テレビに映る誰かがちょっとだけなにかを皮肉った。私はと言うと、テレビの電源を抜いていた。好きな誰かについて理解したい時、どうして最初から全部を知りたくなってしまうのか…

帰化

情報が沢山入ってくるのが不愉快。 人のことは知りたくないけど、知られたいと思う。私は相手のことは何も知らなくていいので、自分のことはすべて把握されたいな。貴方のことは見たくないけど、私のことは全部知っといて、とっても自己中心的でしょう。とて…

足を組むな

私の前で考え事はよしてください。今は体のお時間です。 特別な人のことが特別じゃなくなった途端に特別じゃなくなった歌、さようなら。ひとがどうしたら擽ったくなるかが小さい頃からずっとわかる。ある人は沢山褒めたらいいし、ある人は少し意地悪してみて…

新しい話

そろそろ新しい話に入ってもいいかな。読書が好き、同じ本を何回でも読み直す。お気に入りは、辻仁成の「冷静と情熱のあいだ」、三島由紀夫の「潮騒」、最近は木嶋佳苗の「礼賛」を読んだ。紙をめくる時の渇いた音が好き。私そろそろ新しいお話をはじめてもいいか…

天使がいたから

好きな文章を書いていた人は、友達が出来てから更新を辞めた。幸せになると人は生活をきちんと見つめない。幸せな人が好きだけど、芸術は不幸者を摂取するに限る。今日も仕事をした。画面に酔ってしまって、具合が悪かった。トイレで口紅を3回ほど塗り直した…

行き過ぎた母性

人生で特別な異性というのがみんなそれぞれ居ると思う。私だって沢山いる、両手で収まるか収まらないか、それくらい。親友かもしれないし、元恋人かもしれないし、もう二度と会えない誰かについても、そう思ったかもしれない。 私は好きな人の母親にいつもな…

投了

知らない街の知らないお店で手に取った知らない国のお話。生きていくというのは、ほとんど死んでいくのとおなじ。食べるから排泄をする、排泄をしたからまた食べる。毎日は1個ずつしかなくて、それのほとんどを私が選ぶ。九州の真ん中、小さな街の生まれ。母…

新宿

すみれ。空。鳥が溺れていた。朝、飲み物を飲む。支度をする前の支度。しょんぼりしないこと。とびきり美味しいものが食べたい。最近ご飯を食べて泣くことが無いな。美味しいものを食べた時に涙が出る経験、私は美食家だから。人生って新宿を歩くのに似てる…

小さい指切り

書きたいことしか一生書けないのだろうな、描きたい絵しか一生描けないのと同じように。自分にいちばん嘘がつけない。それも嘘かな。上手に嘘をついてみたかった。 今どこで何をしていますか、ちゃんと毎日ご飯は食べられていますか。今年の冬は風邪を1回で…

辛くても辛くなくても文章書き続ける

普通の人に比べて周りに本当に関心が無いかもしれないと思う。でもそれって私をちゃんと分解したら、人に興味を1度でも持つとその人ばっかりになって嫌になっちゃうのが怖いだけだ。自分に集中してるうちは人なんて気にしなくていいから。自分は好きすぎても…

殺人(発明)

自分の脳を支配しろ、自分の脳を騙せと自分にいった日、人間の頭をビニール袋に入れて持ち歩く夢を見た。そして夢の中で私の頭蓋骨がなくなって、頭を触ると柔らかくなっていた。死ぬまで頭をどこにもぶつけずいきないといけないと知って辛くなった。起きた…

gold

雨の音がする。部屋が寒いのに半袖を着ている。仕事があるのに夜更かし。 綺麗な嘘ばっかりの音楽、あの日のギター、同じフレーズでも歌い方が違ってしまったのは、私とお前の人生経験の差でしょうが。私を正そうとしないで、私にあるのは、泥臭い真実だけで…