鈍く光る

幸せはきっと手元にあるときにその存在や輪郭を正確になぞることが出来ない。みさきくんにもう二度と会えないかもな、とぼんやり考えながらあの苦痛だった高校時代に思いを馳せた。

プールの授業、水面がキラキラ光って私を驚かしてみせた。プールサイドが照って、足の裏が痛い。生物部に所属していてアリの研究をしていた私は、夏の日の地面の表面温度を正確に把握していた。きっと今のプールサイトは50度を超えている、同じところに長いこと立っていたら火傷をしてしまうよ。アリが死ぬ温度で私が死ねないのは、体の大きさと、つくりの仕業ですね。体育教師がプールサイドに水を撒いた、死んだアリは生き返らないけど。

突き放されて、突き放した。一緒に歩いた道がもう思い出せない。多分貴女はさ、もっと上手くやれてたら私みたいになれてたよ。本当だよ。上手に組み立てたり、出来なかったんだろうな。一定水準、人に見せて恥ずかしくないくらいを超えればいいだけだよ、客観視が苦手だったんだね。本当は教えてあげたかったよ。ネイルも随分と上手くなったし、私の「目」が勝ったばかりにね。

一緒にいるときに5時間以上眠りたい。隣でゲームしていたい。一緒にいるのに違うことして、それって贅沢だねって笑ってあげたい。耳の後ろの匂いが好き、夏が来るのが怖くなった、熱中症になって死んでしまう季節、蜂とかにも気をつけなきゃならないし。二人の影がしっかり重なるのを確認して歩いた。街頭の下、天使が来たなんて。朝日が昇るのが、お別れの合図だった。

失わないと気づけないなんて愚かだなと思いつつ、失ってからじゃないと気づけないもの達を、気づかない状態で「持っていた」ことにすごく尊さを感じる。行かないで、なんて言わないけど、私がお迎えに来てって言ったら必ずすぐ返事してお迎えに来て欲しいな。好きな人達に、毎日本当は感謝を伝えたい。私の重すぎる愛によって傷つかない人だけが残った人間関係、明日また誰かに会うなら、傷つけないように生きていきたいな。