2022-08-01から1ヶ月間の記事一覧

朝の光の中、見えた

美しいものが好き。 光の中で手を伸ばして、掴み取った最後の1個があなただったらよかったのに。美しいのか、美しくないのかはっきりしてよと思う日もある。しかし、光に包まれてより白く発光するのを見て、溜息をつく。貴方が美しくないなら、何なのだろう…

二度と私を産むな

新しく買ったアナスイの香水が、私の体温で煩いくらいに薫っていた。汗が太ももを伝い、足首の方まで降りて行った。辛い夏の日が、わたしを殺した。自分が凡人と悟ったのは何歳の時か。凡人であることに対して諦めが着いたのは何歳だったか。自分の顔も、性…

窓際に置いた手

端正な顔立ちが、靴の踵をすり減らす。私たちがどうにでもなれる時間が、間もなく迫っていた。一緒に死ねたらいいのに。一緒に生きられないから。深夜2時、貴方の運転する車のハンドルを、助手席から握って思い切り回した。手に薔薇の花の棘が刺さった時、駅…

振り向いたら撃たれていた

人に言えないようなことが山ほどあった。可愛くて、完璧だったのに。わたしが撒いてしまった悪い種が発芽しないようにいつも震えている。 最近は外に出るだけで熱くて、それで余計無力になる。無気力なまま一歩踏み出したら、空き缶を踏んでこけてしまった。…

追いかけて

どこにも行かないで、と抱きしめられた真夏日を思い出していた。 私だって本当は、どこにも行かないでと抱きしめて離したくない人がいたけど、そんなことを言ったら可哀想だと思っちゃったから、言わなかった。それを平気で口にしてしまえたあの人は、去って…