あの時殴ればよかった

誰とでも仲良いって、誰とでも仲良くないってことだと思う。私だけ、仲良くして欲しい、私だけ仲良くしないで欲しい。

多くを与えられてきた人は狡いな。当たり前に貰えてきたから、その贅沢さに気づかないのだ。気づかないでずっといられる幸福、私も味わってみたかったな。恵まれた人間の不幸話、私には刺激が強すぎた。中途半端を許せる人も、本当は羨ましい。
私が欲してる事が手に入らなくて悔しい時、それを簡単に手にしている人。私もその時間が欲しかった。なんで簡単に持って行ってしまうのかな。私には何故与えてくれないの。とことん意地悪な人。本当に嫌い。私だけにしてくれない人も嫌い。
歯医者さんに本気で恋してしまいそう。指を噛ませてくれるから。指を噛ませてくれない男は嫌い。天然ぶってる女はもっと嫌いだ。消えればいいのに。

会社をサボってディズニーに行こう

暑い。もう9月も終わりそうというのに、本当に暑い。
今日は電車でクーラーの当たらない席に座ってしまったので、電車の中でも少し汗をかいた。
目の前に立つ男性がサンデーを抱えて持っていた。日曜日まではあと5日あった。
今からディズニーランドに行きたい。わたしだけ、夢の国。

ディズニーに誰と一緒に行きたいか考えた。私のことをちゃんと好きでいてね、マスクは出来るだけ外してはダメ。煙草はあんまり吸わないでね、とかそういうお節介をもう言えなくなってしまうんだ。また日付が変わって、次の日になって、また日付が変わって、それを繰り返して間もなく私は虚無感を手に入れるのだ。大好きな人と引き換えに。夢の国には行けない。私はガラスの靴で走れるほど、器用さも大胆さも兼ね備えていなかった。

寂しくて我慢しないといけなくても頑張って生きようね、と言われた時、本当に何も分かっていなかった。私は、なぜ自分にとっての最悪の状況を全くもって考えなかったのだろう。いつも人生でリスクヘッジをしてたのに、今回はそんな事考えもしなかった。己の幸せに驕っていたのだ。

一生このままでいたい。痩せてお腹が余っているズボンも、沢山作ってきたバナーも、もうここで終わらせてもいいかな。毎日日課にしているデザインの勉強も、もとはといえば、人のおかげで始めたことだった。私にとって大切な人、私の夢をきっと笑わない人。多分私と違ってこのままでいたいなんて思わないのかな。思ってもどうしようもないから、ちゃんと受け入れられるのかな。私はまだ何も受け入れられなかった。入ってきたら、10秒くらいは動かないで欲しい。その10秒を、今。

いつも夢に出てくるリサイクルショップ

明晰夢が見れる。
だから私は、夢の中でみんなより勉強したり色んな考え事、体験ができる。でも多分脳は休まっていないため、朝起きてもすっきりしていないのだった。

昨日は昔好きだった人の夢を見た。今も好きなのかもしれない。私は横たわっていた。目の前に彼の唇があった。そのパーツを、紅を、黙って見つめることしか出来なかった。
夢の中では、彼を抱き締めても怒られなかった。何をお願いしても「いいよ」と返ってきた。現実では、いいよなんて言われたことはほとんど無かったのに。目が覚めて辛くなった。ずっと夢の中にいられたらいいのに。

人を撫でるのも、声をかけるのも、全部上手にならないで。いつまでも不器用でいて欲しい。誰かの人生の大役にならないで。私しか貴方の名前を覚えていなければいい。

会社に行きたくなくなった。夏は終わり、今から短い秋が来て、冬になる。冬が終わる頃に会う約束をした。私もあなたも生きてるといいな。世界が終わってないといいな。本当は今すぐでも会いたい人。夢で私は貴方の体を千切って食べていた。本当は、貴方になりたかった。

朝の光の中、見えた

美しいものが好き。
光の中で手を伸ばして、掴み取った最後の1個があなただったらよかったのに。

美しいのか、美しくないのかはっきりしてよと思う日もある。しかし、光に包まれてより白く発光するのを見て、溜息をつく。貴方が美しくないなら、何なのだろう。

誰かに出会ってから、世界に色がついて見えるようになったという表現は、あながち間違いじゃない。そんな「誰か」の積み重ねで、私の世界の色はどんどん彩度を増して、最後にはよくわからなくなってしまった。

夏には綺麗に焼けて、冬には真っ白になる、お洒落な生き物。最後に見たのはいつだったかな。もう二度と会えなかったら嫌だな。

私を抱きしめていても、そこに居ないみたいだったと、その生き物は言った。

二度と私を産むな

新しく買ったアナスイの香水が、私の体温で煩いくらいに薫っていた。汗が太ももを伝い、足首の方まで降りて行った。辛い夏の日が、わたしを殺した。

自分が凡人と悟ったのは何歳の時か。凡人であることに対して諦めが着いたのは何歳だったか。自分の顔も、性格も、何もかもつまらなかった。鏡を初めて割ったのは、14歳の夏だった。
人と比べて良くて、人と比べて悪かった。成績はいつも下から数える方が早かった。何にもなれないのに、何にでもなりたかった、でも何になりたいのかもわからない。矛盾が多い生活が私の首を少しずつ絞めた。皆が幼稚園や小学校で獲得していたような全能感を持てないまま、優等生にもヤンキーにもなれず、毎日苦しかった。
この世で一番欲しいものがあった。ほかのものはどうでも良くて、それだけを指標に生きていた時期がある。生きている人を神様にする行為の危険性をなにもわからずに、狡賢く己を正当化し、ずっとこれが続けばいいと思っていた。本当は馬鹿なのに、難しい言葉を使うような幼稚さ。私を救えるのは、それしか無かったから。

私があなたに新しい名前をつけてあげるよ。その代わりに強い言葉を使わないで。次に産まれてくる時は、貴方の体のパーツがいい。死ぬまで一緒にいようね。

窓際に置いた手

端正な顔立ちが、靴の踵をすり減らす。私たちがどうにでもなれる時間が、間もなく迫っていた。一緒に死ねたらいいのに。一緒に生きられないから。深夜2時、貴方の運転する車のハンドルを、助手席から握って思い切り回した。

手に薔薇の花の棘が刺さった時、駅で知らない男性がぶつかってきた時、海水が目に入った時、嫌いな曲が流れた時。私を痛めつけるもの全てが、貴方だったら良かったのに。ガラスが沢山手に刺さった。わたしに刺さった破片は、その凶暴性には似合わないくらいキラキラしていた。私から生まれたみたい。その手で貴方の顔を撫でたかった。もうずっと離れて暮らしているのに。

私の音を聴いてよ。
電車の中は、私と青年の2人だった。日差しが時たま私たちを眩しくする。30歳の私の誕生日に、一緒に海外旅行に行こうねなんて、有効か否かもうよくわからない約束をずっと覚えている。私の時間を貰ってくれる。貴方の時間を差し出して、きっと私といたら楽しいことが沢山起こるよ。普段は言えることも、言い出せなかった。
高校生の頃のことを、ずっと覚えている。
もう時期冬になるんだというのを実感するような気温の夜、車で迎えに来る母親を学校の前で1人待っていた。自転車の音がして、振り返った。なぜだかわからなかったけど、振り返る前から貴方だってわかった。貴方は私を見て満面の笑みを浮かべ、そのまま挨拶もなしに通り過ぎて行った。あの瞬間を忘れる日がいつかくるなら、私の人生はなんなの。六本木の大きなビルに囲まれながら、自分の町の小さな出来事に思いを馳せた。こんなところにいたって、私は昔から赦されたわけじゃなかった。はやく夏が終わりますように。

振り向いたら撃たれていた

人に言えないようなことが山ほどあった。可愛くて、完璧だったのに。わたしが撒いてしまった悪い種が発芽しないようにいつも震えている。

最近は外に出るだけで熱くて、それで余計無力になる。無気力なまま一歩踏み出したら、空き缶を踏んでこけてしまった。外になんか二度と出てやるもんか。それでも夏はわたしの生活も溶かしてしまって、家に返してくれないの。意地悪な人。

 

わたしの好きな土地も、わたしの好きな人たちも、全部暑さで溶けてつながってしまえば良かったのに。東京と熊本をつなげる術を知らないでしょう。わたしの好きな人たちは、全員わたしに取り込まれて、そうやって年をとって一生を終えていけば良い。毎日デスクに向かって、少し頑張って、少し頑張らない。積もり積もった頑張らないも、頑張るも、どちらも本物のわたしなのに、どちらかしか見せられないならどうしたらいい。人の気持ちがわからなくて、どうしようもなくなった。地元のイオンのアイスクリーム屋さん、秋葉原のまだ行けていないメイドカフェ、もう引っ越してしまって二度と行けない友人の思い出の部屋、4年間通った大学も、全部同じ日に回りたい。台東区にあるこってりラーメンごっつも、下通りの黒亭も、歩いて行きたい。好きなものが全部近くにあって、好きな人も全部近くにいるわたしだけの国をつくりたい。わたしに取り込まれて、わたしが死んだら全部なくなってしまえば良い。みんなとつながれたら。齟齬がなくなって私は誰も傷つけずに済んだ。それだけ。

また人を傷つけようとしている