官能的感覚

私の人生がシルバーだったから、貴方の真っ黒い人生の差し色になれた。関係を急ぎすぎるとき、その恋はもうすぐ終わりってこと。「ほんもの」はいつだってゆっくり。焦れったくなって待てなくて、いつもお利口さんの私のもの。最後まで私が待てなかったことはない。そうやって全部溶かして甘やかして、私をお行儀よく居させてね。シャンパンの泡みたいな、そんな気持ちの日。

お上品な人とするちょっと下品な行為。好きって言っちゃいけない関係なんて、誰が最初に言い始めたんだろう。秘密を人と共有するのが好きだった。大学1年生の冬。熊本で一番のホテル街。回転ベッドのある部屋で、同級生の男の子とキスした日。「食と性は脳の同じところで感じるらしいよ」と教えてくれた。私はそんなことはどうでもよくて、この可愛い生き物を独り占めできてるんだ、という高揚感だけあった。でもどうせ長くは一緒に居られないんだろうなってわかってた。終わりが近いものはパチパチしていて眩しいの。今どんな気持ち?、どうせ死ぬのに人を好きになるのって馬鹿らしいけど、どうせ死ぬのに好きな気持ちを隠すのってもっと馬鹿らしいと思わない。

近くにいてほしいけど、近づきすぎないでほしい。嘘をついたら殺します。あの時、ちょっと泣いてしまった。暗い道でよかった。人生であと何回キスできるの。人生であと何時間一緒に居られるの。体育祭の時にこっそり繋いだ手も、そのあと髪の毛を切って私が幸せになったのも、全部なんだったの。私は髪を切ったけど、貴方の息が耳に当たるたび、切ってよかったと思えた。長く伸ばした髪よりも、誰かといるときの利便性を考えるような理性。まだその時中学生だったのに。

毎日が、長い前戯。挿れる前に死ぬんじゃないかとヒヤヒヤしながら交差点を渡る。映画を見ていても、手紙を書いていても、お風呂に入っていても、寝る前だってずっとそのことばかり考えている。結局、理性が飛ぶような瞬間はあっても、本当に全部飛ばせることって無いんだろうな。才能がないって思う。まだ全然気持ちよくなってない。性にも食にも貪欲になれない。デブじゃないし。欲に忠実に生きるようなお行儀の悪さが欲しかった。私を膨張させて、そのあとキュッと締めるようなスパイス。人づてに聞いたことなんて何も意味がないの、私が良いと思えないなら何もよくない。昔食べられなかったものが、今美味しいような。極上を、もうずっと待ってる。今とても仕上がっています。あとは、お皿の上にちょっと振ってもらうだけなんだけど。