新しい話

そろそろ新しい話に入ってもいいかな。読書が好き、同じ本を何回でも読み直す。お気に入りは、辻仁成の「冷静と情熱のあいだ」、三島由紀夫の「潮騒」、最近は木嶋佳苗の「礼賛」を読んだ。紙をめくる時の渇いた音が好き。私そろそろ新しいお話をはじめてもいいかしら。

好きだった人が死んでしまって、肉体が残るとして、その腐敗していく肉体を私は何日愛することが出来るのか。そこにもうその人は宿っていなくて、ただたんぱく質があるだけなのに、私ってば大事にし過ぎたのかもな。昔の好きだった人たちのことを何となく思い出した。私にとって特別だった。地球最後の日に、空が晴れていて、もう建物なんかもよくわからなくなって、近づいてくる巨大な星だけが見えているような、そんなときに最後に聴くのが貴方の声なら良かったな、と。大きい声を出してもいいし、小さい声で話したっていいから、もう耳の聞こえない私のそばにいて。

知っていたけど知らなかった街を、大学生の頃からずっと履いてるスニーカーでスキップして通った。世界の彩度は私が決める。多少怪我してでも自分で歩くのが楽しいんじゃんと思えた。またいろんな街を歩く、嫌いな春の季節。