2022-01-01から1年間の記事一覧

悪い顔

高校生の時、どうしようもないくらい好きな男の子がいた。 かっこよくて、野球部で、背が高くて、あんまり人と話さない故に女子からは怖い人と思われていて、でも笑顔がとても可愛い人だった。笑う度に八重歯が見えた。ガチャガチャの歯並びですら愛しかった…

鏡を見る

「嫌いな人の嫌なところは、自分に似てるから目につくのよ」と母はよく私に言った。 でも私は必ずしもそうは思わなかった。例えば、すごく嫌いな人がいるとする。 自分はその人と全く性質が正反対で、しかもすごく意地悪なことをされているとする。 そのとき、…

目安にしないで

測られたくないから、測定されているとわかった途端に分度器を壊した。一瞬で割れたそれを見て貴方は何を思ったの。やっぱり聞きたくない、口を閉ざしたままでいて。大きく息を吸って吐き出した。もう空気は白くなったりしなかった。本当に、冬が終わってし…

春の呪い

自分の中で夏より嫌な季節は、春だ。 春には重くて苦い思い出がたくさんあるのにさ、春は麻薬みたいで、掴みどころがなくて、私の前からいつの間にか消えていってしまうのだ。 嫌な気持ちだけを残して。何もしたくない。こんな狭くて汚い部屋から私を早く連…

木星に行きたいの

宇宙に私が1人漂っていた。 目の前にある星屑たちを掴もうとしたけど、届くわけは無かった。 寂しい、と口に出して言ってみたけどその言葉はキラキラ光って私の元から離れて行った。ごめんなさい、私がもっと大きかったらよかったのにね。160cmとちょっとの…

贈り物をください

人からいただくものは、何が好きですか。 私は、今は文章が一番欲しいです。 私のための言葉を、時間をかけて紡いで欲しいと思うのです。お金と時間でしか愛は測れなかった。私のために、人生の時間を沢山使って欲しいと思うから。 離れたくない。でも、遠く…

不幸の湯

不幸のお湯があるなら、それはきっとぬるま湯であろう。 冷たくて、少し暖かくて、上がろうとしても上がれないのだ。サウナと冷水のように、ストレスと幸福を行き来すればきっと整うのになと思う。熱い環境に身を置く覚悟も、態を食らう体力もなくなった。ぬ…

捲る

早くに亡くなった芸術家は、才能が致死量に達したのだなと思う時がある。 Eveのラストダンスという曲を、私は芸術家の曲だと解釈した。 あなたは言った消耗品さ、という歌詞は自分のつくりあげた作品が金儲けの道具として都合よく使われていることに対して皮…

都合のいい朝

本日は、なんとなく行った銭湯で体以上に心が温まる思いをした。いい休日であった。地元の人しか来ないような温泉に行った。 お湯はポカポカで、私は目を閉じて体育座りの姿勢になり、ドクンドクンと体が感じる瞬間を待っていた。もうすぐです、とおもって。…

私を読まなくちゃ

頭が割れるように痛かった。何も出来ないならできないなりに、さっさと全部終わらせればよかったのにね。たまにどうしようもなく無理したくなる。私のことを見抜いてくれる他人が好きだ。私の肉体や空気、建前を全部無かったことにして、直接魂に到着してく…

私たちみたいな星だね

ダメだと言われたことに限って、何でやってしまいたくなるのだろう。幼い頃からこういう人間だった。人を傷つけてはいけませんも、学校に遅刻してはいけませんも、何もかも、私をそうさせるための特別な言葉。自分の部屋のデスクトップパソコンで、外国の映…