くちづけ

静かな冬の味がした。この季節がとても好きだ。冷たくて、動けなくて、暖かい。インスタグラムに載せない夜。歌詞の意味がわからないまま聴いている歌。怖くて見れないプロフィール。貰った手紙。この季節は私を傷つけて、そのあと私を包み込む。ずっと友達というのは、本当に嘘だった。友達だった瞬間に戻って、2人で死ねたら良かった。大切にしたかったのに壊した。もう二度と巻いて貰えないネジを、私は心につけたまま。硬い突起なんて痛いだけなのに、私はそれをずっと持て余すしかない。
曖昧な態度は自分にもかえってくる、おみくじに書いてあった。御免なさい。返事を伸ばして伸ばして、今からずっと遠くのカレンダーに置くのが好きだ。約束をするのが好き。詩的な時間じゃないと嫌。誰にも適当にされたくないから人を適当に扱わない。でもそれも疲れた。100で当たると人を壊してしまうから。私は遠くに置いた約束を、二度と回収出来ない。そこにあるのに、横を通り過ぎて、あーあと思った回数。私が1番遠くに置いている約束は、30歳の誕生日だ。何処にも行かないかもしれない。そもそも生きているか分からないけど、約束をしてくれてありがとう。
冬になると頭が冴える。どうせ死ぬのになんで爪に色を付けるのだろう。ただのたんぱく質を染めて、風に流す。社会的死、そして生物学。もっと淡々と生きてもいいよ。私をとおりすぎて、約束も置いたままでもいいよ。寂しくて流した涙が紛れもなく生きていることで、辛くなった。日光を浴びて、ビタミンCをたくさん作ればこんな気持ちもなくなるのかな。夕焼けを切り取って、それだけ載せたアカウント。雑でもいい、切り取るのを辞めないで。影ができるのは、陽向に立っている証拠。