成人式

あるとき、泥のついた宝石だった。見つけて欲しかったのにいえなかった。幸運なことにも気づいた人がこっそり持ち帰り、小川で泥を洗ってくれた。ありがとうすら言えなかった、口が着いていなかったから。それでも捨てたりせずに、大切に仕舞ってくれた。貴方が手に入れたのは私じゃなかったんだ。私が手に入れたものが貴方だったのだ。この季節に手に入れたものは、一生無くさないようにしているから、私は何処へでもついていく。

少しずつ自分を砕いて人に配った。私に映る貴方を見て欲しくて、精一杯光った。人を通して、自分を知る。私を見ているようで、自分を見ているままでもいいよ。むしろ貴方自身を見て欲しかった。人は鏡。人を見る私を見る。そうして、左様ならなんだと察した。冬は手放す季節。執着も、何もかも。私を磨く人を求める、気づく人、小川のような人、時にあんぜんなひと。

憑き物が取れたように、穏やかに。10月から眠っていたんだ。川のせせらぎが私を起こした。極端に共感性がなくても生きていけますか。私の性格を、やさしいと形容してくれるような、柔軟さも視野の深さも何もかもが贈り物だった。物なんていらないから、私は最初からこれが欲しかった。本質が掴めない頭の悪い人が嫌い。本質を意識しない人が嫌いだった。でもそれもどうでもいい、私だけ幸せだったらそれでいい。

弱い人は嫌い。弱さを盾にして、本当は強いひとはもっと嫌い。大好きな人が近くにいないってこんなに辛いんだ。この寂しさも好きになりたい。たぶん私はまた人を好きになるし、期待もするし、それによって傷ついても、どうせ生きていける。なぜなら、魔女と宇宙人のハーフだから。会いたいよ。本当の意味で今日成人した気がする。式を挙げてくれてありがとう。私はここに置いていくからね。成人前の自分へのさようなら、そして、ここから。