洗濯物が乾かない

帰り道、近くの小さな神社に手を合わせた。
今日は明るい時間に帰ってきて、朝は5時、スポーツウェアを身にまとって運動靴で歩く人か、犬の散歩をするパジャマのシニアとすれ違う、そんな帰り道だった。

全てが思い通りにいかない。

毎日私の心は少しずつキュッとされて、きつく縛られていくみたいだった。なぜこんな目に、と思うでしょうが、そんなふうに泣いたってどうにもならないのは22年生きてわかったはずだった。

何にも腹が立てれない。
無気力だけが私に溜まっていった。悲しくて泣いてもいいけど、そうしたら何かが壊れてしまって、私はもう戻れない気がする。
仕方がないから、ここからは出し惜しみしていた魔法を使って生きていくしかないんだと悟った。私の家系は全員魔女の血が流れている。

誰にも理解されずに死んでいきたいなんて寂しいことを言う。私は今日夢の中で、腕が細く色の白い男のうえにピタッとくっつき静かに呼吸をしていた。口から唾液が沢山出て、相手の顔に伝った。男はすごく嫌そうな顔をした。
自分と男を上から見る形の夢だった。そういう日もある。

男のひじは、少しだけ赤い。
美少女みたいな配色をしているなあと初めて会った時から思っていた。全体的に色素が薄い。肌の色が白い。唇が薄い。血管が青く透けそうだった。


起きてみると、もう夕方が近くなっていて
私は慌てて支度をした。最近は湯船にしっかり浸かっている。優しくないこの街で、優しさに包まれているみたい。入浴剤は、大学の親しい職員にもらったものだった。

ここで溺れて死ぬ。
右側から、ピーッと洗濯が終わった音がした。