プールに行けなかった夏


先日、教授から電話があった。最近はどうですか、と聞かれて、ぬいぐるみを作って生活していますと答えた。浮世離れもいい所だ。先生、私は今日からお弁当屋さんになります。

今年の夏を振り返る。今年の夏は、ずっと動かなかった。
一日の殆どを自室で過ごした。絵を描いたり、ブレスレットを作ったり。手芸もはじめた。昔は縫い物なんてチマチマやる人達を、何が楽しくてやっているのか?と思っていたのに。

本来ならゴミになるはずのパネルの余りに絵を描いた。描いた絵を教授の部屋に展示して、個展を開いた。私が作った作品を見て、友人が笑ってくれた。作品に値段がついた。

私は、これらは自分のやった事なのに「魔法みたい」だと思った。ゴミになる廃材を作品にして、人に楽しんでもらった。私は魔法使い。でも、それを面白がってくれる人もまた、魔法使いだ。
私を魔法使いにしてくれてありがとう、とこの夏何度思ったか。今年の夏は、嬉しい夏だった。


動かなかったと言っても、動いた日もちゃんとあった。
例えば毎日博物館に出勤したり、例えば選挙カーの声優バイトで隣の町にお邪魔したり。映像制作チームの人が、動画を撮ってくれた。ポートレートの撮影も、この夏はしてもらった。
私は、私と仲良くしてくれる人達のことが大好きだ。周りの人がいなかったら、こんな楽しい夏は送れていないから。



最近は地味なものが好きだ。ぬいぐるみを作る時、針を一刺し一刺ししていく感覚が、好き。
小さい火がゆらゆら揺れているのを見るのも好きだ。アロマキャンドルが好き。
あと、洗濯物を干すのが好き。私の家は乾燥機があるにもかかわらず、わざわざ洗濯物を干す。
朝には濡れていた衣服が、夕方には乾いている。当たり前のことだが、落ち着く。
乾燥機を使った洗濯物は触り心地がふわふわしているが、干した洗濯物はパリッとしている。今の私は、このパリッという感触が好き。


お洋服を作りたいな、と思う。
自分に驚いた。想像意欲がありすぎるから。
どんなお洋服が作りたいかと言うと、まだ内緒だ。可愛いけど変なお洋服。ちょっと細身な方が似合うと思うから、もしそれを作ったら1度体を絞ろうと思う。


せっかく古文書についてお勉強したから、和紙に墨でお手紙を書きたい。調べたら、150円(たしか)切手を貼れば、変わった形状であってもお手紙が送れるみたいだった。

やりたいことがたくさんある。インプットの夏、発見の夏。2021年も残り少なくなってきたが、今年は本当にたくさんの収穫があった。でも、ちゃんと収穫できた自分も褒めたい。残りも、楽しく。