夜に、自室の電気を消して、パソコンを触っていた。
キーボードが光るので、便利だ。暗いところでもどこがどのキーなのかわかる。
暗闇に、文字だけがあった。可愛かった。光る文字。たまにキーボードの一つ一つが窓の明かりみたいで、街の風景が並んでいるようにも見えた。アルファベットとひらがなでできた街。可愛いと思う。もし住むなら、どの文字の物件に住みたいかな?「w」に住んだら、愉快そう。でも、可愛さ重視なら「め」とかだろうか。?の物件でもあるし。一度キーボードをじっくり見てみてほしい。あなたはどの文字の物件に住みたいっていうのかな。
私のことを「あなた」と呼んでくれる人、好き。あなた、ではないかも。「貴女」に限りなく近いのだ。
あと、好きなものといえば後輩の男の子だ。私の人生の好きなものリストからはずっと外れない、「年下の男」。
amazonのほしいものリストは、ほしいものがプレゼントされたらそのリストから商品が消える仕様になっている。
私の人生のほしいものリストから「年下の男」が消えたことは一度もない。私が、一度もプレゼントされたことがないもの。このまま多分されることはないのだろうな。受け取りの住所がないから。私は年下が好きと言いつつ、多分年下の男の子と付き合う元気がないのだ。
「年下」、と。
年上なんだけど、年上感のない男はほしいものリストにはない。
本質的に一番求めているのは明らかにそこなんだけど、ほしいものリストに入れたことは一度もないと思う。ほしいものリストに入ってるものって、「軽い」ほしいなのかもしれないな。私にとって、年上だが年上感のない男というものは多分そういうほしいじゃないのだ。ほしいとか、もはや思わないくらいフラットに、だけど一番深く求めているそれなのだった。
誰にどの物件が似合うか、キーボードの文字をぼんやりみながら考えた。
4、とかどうかな。いや、Lに住んでる男とか、いいかもななんて思った。そういえば、私は曜日や数字になんとなくイメージする色があったり、数字に性別のイメージがあったりするが、無い人も多いらしい。4のイメージは紫色、とか、日曜日は白とか、そういうなんとなくのイメージ、ないのか。無い人は、なぜないのだろう。ある人は、なぜあるのか、なんでだろうな。
私がこうやってアルファベットを見て、誰がどのアルファベットっぽいとかいうのも、他の誰かから見たら変なのかもしれないな。でもいい。私は、私サイドの人間の方が楽しいと思えるからだ。
アルファベットを見て、ニコニコしよう。
あなたはどの物件に住みたいですか。私はどの物件が似合うでしょうか。
あなたと私が住むとしたら、どこにしますか?教えてください。